紀の川市のJR粉河駅前に位置する山﨑邸は、近代和風建築と呼ばれる貴重な文化財建造物です。
母屋は、1917(大正6年)に棟上げされています。当時は第一世界大戦の影響で景気がよく、特に県内では紀北紀中を中心に綿ネルと呼ばれる綿織物の生産加工が繁栄し、全国でも有数の産地でした。
この住宅を建築したのは山﨑家の当主栄助及び次の代を担う栄吉です。山﨑家は和歌山市に綿ネル生産工場を持ち、朝鮮半島方面への販売で財を成したと伝わっています。
大工棟梁は和歌山市と高野山の大工2名が担当したのではないかと推測しています。
この建物の一番の見所は、大広間です。15畳の主座敷と10畳の仏間からなり、主座敷には床の間、違い棚、琵琶床、付け書院等の座敷飾りを備え、壁は、金唐紙を張り、天井は折上げ格天井などと豪華なものです。
また1階と2階にある傘天井の部屋や、和洋折衷の階段室に質の高い意匠を見ることができ、多くの良材が使われていることも魅力です。その他、改造が少なく屋敷全体の構成も含めた保存状態が良いこともこの住宅の特徴です。
このように山﨑邸は、未来に伝えたい貴重な文化遺産です。
立派な門構えが2018年9月の台風21号により倒壊し、皆さまからの修繕カンパなどご支援を頂き、新たな門になりました。本当にありがとうございました。